1987年1月25日朝刊 「東京新聞」

1987年1月25日朝刊 「東京新聞」

東京新聞に「抗がん剤による脱毛を防止」掲載されました。


抗がん剤による脱毛を防止

hairloss_3_s.jpg

 タンパク質を主成分にした新しい養毛剤を事前に塗ると抗がん剤の副作用による脱毛を防止できることが、 武蔵野赤十字病院(東京都武蔵野市)の仁藤博泌尿器科部長らの研究でわかり、 二十四日武蔵野市で開かれた多摩地区泌尿生殖器悪性腫瘍(しゅよう)症例検討会で発表された。
退院後、早期社会復帰を目指す患者にとって脱毛は大きな悩みだが、 この養毛剤でこうした悩みもなくなり、大きな朗報といえそうだ。

 同病院では、抗がん剤を投与されているがん患者から 「脱毛したままだと退院してもすぐ社会復帰できない」との悩みが相次ぐため、 病院内の理容店と協力して何種類もの養毛剤を使って育毛を試みてきた。 しかし、ほとんどの養毛剤は効果がなく、逆に脱毛を促進するものもあった。

 五十九年初め、三恵製薬(東京・南麻布)からタンパク質の一種であるアルブミンを主成分にした 養毛剤(テタリス)が持ち込まれ、使ってみると、効果のあることがわかった。
もともと、一般の養毛剤として開発した同社は、 抗がん剤の副作用による脱毛を防止できるという思わぬ効果にぴっくり。
同病院と同社は協力して、どれくらいの量をどのように使えば最も効果があるか、 これまでに約百五十人を対象に試行錯誤を繰り返して調査した。

 その結果、抗がん剤の投与開始後や毛が抜けてしまったあとでは効き目はないが、 投与の前日か二日前から毎日三回、二・七グラムずつ頭の地肌にすり込むと効果のあることがわかった。 また、抗がん剤の投与をやめたあと毛髪が生え始めるのは普通半年後だが、 この養毛剤を使うと、二-三週間後で生え始めることもわかった。
 泌尿器科のがん患者十五人に使った成績では、 普通なら抗がん剤による副作用で髪の毛の五〇―九〇%が抜けるのに対し、 全く抜けない人が三人、一〇%しか抜けない人が二人おり、 最も多く抜けた人で七〇%、平均三〇%の脱毛率にとどまった。

 仁藤部長や同社の松原靖社長によると、抗がん剤は血管を通って体内の組織の隅々に行く。
増殖の盛んな組織ほど抗がん剤がたくさん行ってやられる。
毛根もその一つで、抗がん剤が沈着、栄養分を吸収できないようにして細胞分裂を阻止、脱毛する。

 数百種類はあるといわれる養毛剤は、せんじて飲む健胃剤のセンブリ(薬草)やトウガラシのエキス、ビタミンEな主成分にしている。
血行を促進して栄養分を毛根に吸収しやすくするか、頭皮が乾かないようにして脱毛を防止することを狙っている
ところが、血行をよくすると、血中の抗がん剤も毛根に到達しやすくなって、逆に脱毛を促進する場合もあるという。

 これに対し、新しい養毛剤はアルブミンを主成分にしており、血行を促進する成分が入っていない。
このため抗がん剤の作用が少なく、アルブミンが栄養剤として毛根に作用するため脱毛が防止できるという。
 同社は五十一年からアルブミンを主成分とした新養毛剤の開発に取りかかり、五十七年にヘアトニックタイプのものを完成させだが、 頭に塗るとアルブミンのにおいが強かった。
そこで研究を続け、昨年春、においのないものを完成。さらに一回ずつ使い捨てでき、 患者が寝たままでも使えるように、小指の先ほどのチューブに入ったクリームタイプのものを開発、 今月十三日、厚生省から頭髪用化粧品として許可された。

 これまでにも、タンパク質を構成するアミノ酸を栄養源として混入した養毛剤は一部にあるが、 主成分は血行を促進させるもので、今回のように栄養源のタンパク質を主成分としたものは初めてという。
 仁藤部長は「いろいろな養毛剤を試してみたが脱毛防止効果のあるものはこれ一つだった。
がんを治すことは最優先で、脱毛するからといって抗がん剤の投与を減らすことはしない。
しかし、脱毛で精神的なショックを受ける人は多い。
こうした患者の気持ちに少しでもこたえようと思って使っている」と話している。

テタリス製品については、http://www.tetaris.com